お疲れ様です!ゴリポンです!
今回は、在宅での「高齢者」、「転倒予防」についてまとめるシリーズの第2弾!「転倒リスクの評価について」です!!
今回、患者さんの転倒のリスクを考えるにあたり、どのようなデータや評価方法があるのか、書籍・文献と自分の意見を書いていきたいと思います!
目次
転倒リスク評価について

各運動機能評価のカットオフ値を知っておくこととは、転倒リスク判断に重要な要素です。
自分は初めてリハビリしていく中で、いろいろなことが予測出来なくて動作を見ることに不安がありました。動作観察が苦手・経験の浅い若手のセラピストにとっては、自分の目で見た評価に加え、色々な情報が頭に入っているのは心強いです!
まさに「巨人の上に立つ!!」という感じです!

転倒リスク評価としては、運動機能測定によるリスク評価と質問用紙表によるリスク評価があります。
(普段の臨床では、質問用紙表は使ったイメージはないですね・・・)
まずは、運動機能測定についてまとめていきたいと思います!
運動機能測定ってどんなものがあるのか?

運動機能測定の代表的なものとして、
ファンクショナルリーチテスト、Time up and go test、歩行速度を測定するものがあります。他にも色々な検査がありますが、今回は3項目についてのカットオフ値、エビデンスを見ていきます。
ファンクショナルリーチテスト

ファンクショナルリーチテストでは、測定値が25cm以上の場合と比較して、16〜24cmであれば転倒リスクが約2倍(オッズ比:2.00)に、15cm以上の場合には転倒リスクが4倍(オッズ比4.02)になると報告されています。
Time up and Go test(TUGT)

次にTime up and Go test(TUGT)です。
TUGTのカットオフ値としてはShumway-cookらが、地域在住高齢者30名を対象として、検討したところ13.5秒(感度87%、特異度87%)だったことを報告しました。
なお、市橋則明らは、517名の地域在住高齢者を対象にTUGTの測定を行い、そのカットオフ値を求めたところ、13.8秒(感度60.5%、特異度60%)だったとのことです。
このように13.5秒付近を境界に、転倒リスクを判断することが可能であると考えられます。
歩行速度

次に歩行速度です。
方法としては、
歩行速度のカットオフ値としては、Cwikelらが、5mの通常歩行速度で0.5m/sec(歩行時間10秒)(感度83%、特異度69%)をカットオフ値としています。
このようにファンクショナルチーチテスト、TUGT、歩行速度はいずれも研究によりカットオフ値が報告されている測定項目ですが、簡便に行うことが可能です。
そのため、臨床では様々な測定を組み合わせて総合的な判断を行えば適切な転倒リスク評価を行うことが可能であると考えられます。
質問紙による評価とは?どんなものがあるのか?

質問紙による転倒評価は、病棟で実施されるのが一般的だが、施設入所高齢者や、地位在住高齢者の転倒リスクを判断する上でも参考となる情報である。
引用:市橋則明著 「高齢者の機能障害に対する運動療法」より
とあります。
転倒リスク評価の質問紙としては、MorseやOliverのアセスメントツールがあります。これらはいずれも病棟での転倒リスクを評価する目的で作成されたものです。
地域在住の高齢者の転倒リスクを判断するものではないですが、在宅で生活されている患者さんがレスパイトの目的でショートステイ、介護老人保健施設などの施設利用を行う際には、有効だと考えられます。
Morseらのアセスメントツール

まずはMorseのアセスメントツールです。
評価する項目としては
- 転倒経験
- 合併症
- 補助具の使用
- 静脈内注射/ヘパリンブロック
- 歩行レベル
- 精神状態
です。点数は125点満点であり、カットオフ値が45点です(感度78%、特異度83%)
Oliverのアセスメントツール

次にOliverのアセスメントツール(St. Thomas Risk Assessment Tool in Folling Elderly Inpatients : STRAFY)です。
- 転倒経験
- 興奮している
- 日常生活に影響を及ぼす視力障害
- 頻回な排泄
- 移乗・移動
5点満点であり、カットオフ値は2点です。(感度93%、特異度88%)
この2つのアセスメントツールで共通なのは①過去の転倒経験、②精神状況であり、これらの項目は転倒リスクを判断する上で重要と考えられます。
なお、地域高齢者の転倒リスク評価のために作成された質問紙としてはOkochiらによるものがあります。
Okochiのアセスメントツール

Okochiのアセスメントツールの項目については、
- 転倒経験
- 脊柱後弯変形の自覚
- 歩行速度低下の自覚
- 杖の使用
- 5種類以上の服薬
となります。13点満点であり、カットオフ値は6点であると報告されています。(感度67%、特異度71%)
このアセスメントツールには、脊柱後弯変形や歩行速度など姿勢や運動機能を問うような内容が含まれていることが特徴の一つです。
動作や運動を行ってもらう中で評価する質問用紙もある!

質問紙には、「はい」、「いいえ」のような単純に回答できるアンケート式だけでなく、実際に運動を行ってもらい、その状態を検査者が判断するようなものもあります。
Cwikelらのアセスメントツール

まず、Cwikelらのアセスメントツールです。
- 転倒の回数
- 外傷の有無
- 転倒しそうになった経験の有無
- 歩行速度の測定
- 歩行状態の観察
5点満点であり、3点以上が、ハイリスク高齢者となることが報告されています。(感度83%、特異度69%)
Tinettiのアセスメントツール
次に、Tinettiのアセスメントツール(Performance-Oriented Mobility Assessment : POMA)です。
まず、バランス項目については、
- 座位バランス
- 起立
- 起立の試み(何回の試みで起立できるのか)
- 起立直後のバランス
- 立位バランス
- 軽く押した時の反応
- 閉眼時間
- 360°回転
- 着座
次に歩行での項目として、
- 歩行の開始
- ステップの長さと高さ
- ステップの対称性
- ステップの連続性
- 歩行経路の偏位
- 体幹
- 歩行時の歩隔
28点満点であり、19点以上で転倒の危険性が高く、24点以上で低いと報告されています。
Van-Swearingenらのアセスメントツール
Van-Swearingenらのアセスメントツール(The Modified Gait Abnormality Rating Scale)は、異常歩行に焦点を当てたアセスメントツールで、項目としては
- 歩行時の動きの変化
- 転倒に対する慎重さ
- ふらつきの程度
- 足の接地
- 股関節の可動域
- 肩甲上腕関節の伸展の状態
- 踵接地の同調性
21点満点であり、転倒との関連性が示されています。
転倒リスクを評価することは患者さんに大きな還元ができること

転倒リスクの評価として、色々な検査を行うことを自分はできていなかったことが多いので、このように検査をすることで、患者さんの予後を予測するためにも重要だと感じました。
運動機能や、動作を同じ質問用紙(評価用紙)に記録しておくことで、他のセラピストが評価しても、一定水準以上の情報が得られていることが保証されている点で有用なツールであると考えられます。
病院を退院することになった患者さんや、その後自宅に帰ってからも通所リハビリ・デイサービスなどでリハビリをさせていただく中でも「在宅で安全に生活ができるか」「本人が行いたい社会活動を安全に行うことができるのか」を考えてリハビリを行います。
機能検査や質問紙の評価では、研究によるデータがしっかりあるので、主観的になりがちな患者さんへの説明や、他職種への説明が客観的な指標も踏まえて説明ができます。
皆さんの評価の参考になれば幸いです!
今回は以上です!